2017年10月20日更新
にんにくの植えつけは9月下旬あたりの秋に行われます。
早いもので今年もニンニクの植え付け時期になり、
岡崎屋も9月28日より田子にんにくの栽培に取り掛かりました。
にんにくの作り方の前に重要なにんにくの種、
青森県の主力品種である福地ホワイト6片種の歴史から説明します。
写真は、青森県の主力品種である「福地ホワイト6片種」です。
日本でにんにくが食材として食べられる様になったのは1950年代、それまでは風邪をひいた時など主に薬として用いられていました。
それならにんにくは栽培されていなかったのかといえば、その土地に独特の在来種といわれるにんにくがあり栽培されています。
福地ホワイトは今は無き青森県福地村で栽培されていた苫米地にんにくが元です。1959年 青森県農業試験場では、にんにくが一般家庭でも広く食べられる様になると日本国内はもとより海外からもにんにくの品種を集めて試験栽培を始めます。その中、優良品種として福地種も選ばれていました。
福地ホワイトは、他の品種とは違い真っ白で大玉ができるという大きな特徴がありましたが肥よくな土壌でないと育たないという欠点もあり当時は大きさにおいて福地種に匹敵する「岩木種」を青森県の主力品種にする案が8割方決まっていたといいます。岩木種は福地種と比べてやせ地でも育つという作りやすさがあったのです。
育てづらい福地種、育てやすい岩木種なら岩木種を作った方が楽であったはずですが当時の農業研究者や農家の中に将来を考えれば福地ホワイトにするべきだと譲らない者もいたのです。というのも岩木種の欠点は他県の品種でも見られる赤みをおびた色がついている事でした。すり下ろせばその色が見た目の良くない色にどうしてもなってしまうのです。福地ホワイトにはそれがありません。
農業試験場では当時、岩木種以外に、岩手県の岩手種、北海道の富良野種そして青森県南の福地ホワイト6片種などを試験栽培していました(気候が違う暖地系にんにくは大きくならない事が試験で確認済みでした)1960年代後半、青森県産にんにく種子の選定において8割方、岩木種に決まっていた中、福地ホワイトが逆転します。理由は福地ホワイトを奨励する当時の所長が球の大きさと白さ、そして将来性を重視すれば福地しかないと考え思い切った行動に出たことでした。なんと試験栽培をできなくする為、岩木種のにんにくをすべてを売ってしまったのです。
岩木種の試験栽培を出来なくしてしまうという暴挙に当時の関係者は、怒るどころか逆に褒めたといいます。逆転で青森県推奨品種となった福地ホワイトはその後、田子町で日本一の品種に育つことになります。
当時、岩木種を選んでいればお隣の岩手種と同じで赤みを帯びたにんにくの為、差別化できず岩手県との競争に負けて岩手県が日本一の産地になっていたといいます。
福地ホワイト6片種は旧福地村で生まれ田子町で日本一に育てられた品種です。
今年も沢山の方々にニンニクの種をお届け出来ました。無農薬に取り組まれている農家の方、今年定年し農家を始めた方、にんにく好きで自らもにんにく作りに挑戦する方などそれは様々。皆さん真剣に取り組んでいる方ばかりで色んな質問を頂きましたが私は、電話口でニンニクの作り方を伝えるより写真付きでお伝えした方がより分かりやすいと思いましたので今後、田子ニンニクの植え付けから収穫までを写真付きでお伝えしたいと思います。生にんにくの収穫が楽しみ。簡単では有りますが少しでも皆さんのニンニク栽培の参考になれば幸いです。
①【にんにくの植え付け】
時期はトンボが舞う頃の秋、9月末から10月前半に行います。
にんにく栽培は土壌作り気候が重要ですがこればかりは日本全国で違いますので省略致します。気候はどうしようも無いのですが土作りの際は完熟たい肥を使用します。
完熟堆肥をにんにく植え付けの1カ月以上前に畑になじませます。
田子町は古くから畜産が盛んなことから有機肥料が豊富にあったことも品質の良いにんにくが栽培できる理由の一つです。たい肥作りにおいては「稲わら」か「もみがら」を使いますが岡崎屋ではその時々で稲わら、もみがらを使い分けています。
この有機肥料をたっぷりと使えるため田子町のにんにくは糖度が高く、香りが良いにんにくが育つ理由でもあります。家庭菜園の場合はホームセンター等で完熟たい肥が販売されていますがお勧めは牛です。何故かといえば、にんにくの田子町は牛のたい肥で育てているからと云えば納得できるでしょうか。
②【土壌ならし】
にんにく植え付けの前に土を起こし柔らかくし木材などでならします。
家庭菜園の場合はクワを使っての作業になると思います。よく「どれくらい堆肥をまぜるの?」と質問されます。回答は1㎡あたり堆肥2kg、うねの高さは10㎝程度になります。
③【にんにく作り植え付けの間隔・深さ】
にんにく栽培に関して良く受ける質問の中に「ニンニクを植える間隔は?ニンニクを植える深さは?」の質問にお答えします。
にんにくの植え付け幅は15㎝間隔。植え付け深さは7㎝前後。
【にんにく植え付けの間隔】
【にんにく植え付けの深さ】
と言われても、植え付け間隔はマルチを使用した場合、穴に入れていけば良いのですが、植え付け深さ7㎝などいちいち測ってやっている訳では有りません。簡単な方法はニンニクの種を指先に持ち土の中にズボッと入れて指が隠れる位が7㎝です。
【にんにくの先が尖った方、芽が出る方を上にし、土の中に押し込みます。7㎝前後です。】
【土を戻します】
【にんにく植え付け作業】 【田子にんにくカッチャ】
【1】 【2】 【3】
【えぶりを使用してならす】
種の植え付けが終わったらマルチの上に土を被せます。画像【1】
その後、えぶりを使用しニンニクの種を植えた部分だけを残し土を取り除きます。画像【2】
マルチの穴の部分だけを残してえぶりでならしていきます。画像【3】
田子にんにく農家はこんな感じで一連の作業を行います。
2017年9月28日~30日 【岡崎屋 田子にんにく】植え付け完了。
たっこにんにくの発芽が楽しみです。
たっこにんにく植え付け10日後です。生まれたばかりの半透明なニンニクの芽が分りますか。
近寄ってみると。。。
にんにく植え付け後10日で発芽。
にんにく栽培21日目。
写真で云うと太陽の光が反射している当たりのニンニクの芽が発芽していません。
これはマルチシートの中で苦しんでいるニンニクが存在しているのです。早く出して上げなくてはいけません。
土が盛り上がっています。
手でかきわけるとにんにくの芽が
にんにくの芽を出してあげます
④【にんにくの芽出し】
にんにく植え付け作業では勿論にんにくの芽が出る方を上にして植え付ける訳ですが
野菜とは太陽に向かって成長するもの。すべてが,マルチシートの穴から芽を出してくれる訳では有りません。にんにく植え付け後に大雨などでニンニクの種の位置がずれる事も有ります。
にんにくの芽を出してあげたら最後は土を戻します。真剣に取り組んでいる時は時間を忘れるものです。今日もカラスが終了時刻を教えてくれました。
【田子にんにくはマルチをも突き破る強靭な力で厳しい田子町の冬を越し成長していきます】
一度にんにくの芽出し作業をおこなったからといっても必ず取り残しが有ります。
雪が積もるまで取りこぼしたニンニクの芽出し作業を出来る限りおこないます。
雪が降り積もった後は何も出来ません。天命を待つのみです。
⑤【雪解けを早める為の炭まき】
3ケ月もの間、雪の下で暮らす田子にんにく。3月末にはこの様に炭をまいて雪解けを促進する作業をおこないます。
雪解けも進み糖度を高めた田子ニンニクがいよいよ冬眠から覚め成長が一気に始まります。
これぐらいに成長したら間引きをします。一株から2本3本とニンニクの茎が成長していたニンニクがこれまでの作業の中であったと思います。
⑥【にんにくの2本立ち処理】
このまま育てても大きい立派な球になりません。そこでどちらかを抜く訳ですが見極めが重要になります。太さが違う場合は勿論、細い方を抜く訳ですが同じ太さの場合は、にんにくの葉の枯れている方を選び引き抜きます。
実際、同じ太さの場合は私も足が止まります。良く見極める事が重要です。
畑を一周したからといっても必ず取り残しが有ります。何度も足を運んではこの作業を繰り返します。私の場合、にんにく畑が気になって毎日向かう訳ですがそのついでに、この2本立ちの処理を行う感じです。一人でやっていると気が遠くなる作業ではあります。
にんにくの2本立ちの作業で最も注意することは引き抜く際に、残しておく方の
根を切らない様にしなければいけません。根を動かし切れてしまうと枯れて
しまいます。せっかくの成長を促進する作業が枯れさせてしまっては意味が
ありません。
にんにくを販売する為ではなく、自家消費の家庭菜園として栽培するのであれば
枯れさせる危険もありますので逆にこの処理をする必要はないと思います。
一片の種から2本も芽が出る仕組みは種の断面を見るとわかります、一片の種を輪切りにすると通常1つしか無い芯が2つあるんです。
外見からの判断は難しく皮を剥いて見るとくぼみが有りわかるのですが、いちいち皮を剥いて確認して植えつけする訳にもいきませんのでそのまま植え付けし鱗片肥大化の時期に生育の良くない方を選んで抜いてあげる作業をします。
ここで、にんにく料理の紹介。
間引いたにんにくの風味は弱いのですが農家の賄料理として油炒め、すりおろしてタレ、薬味に使えば一足早く生にんにくを味わえます。
お勧めは酢漬けです。長期保存が可能ですし酢漬けにして出来た、にんにく酢が万能調味料になります。カレーに入れると劇的に美味しく変化しますよ。
私は、焼きそば、野菜炒め、餃子のたれ、汁物(ラーメン うどん等)に入れて食べるのですが、どれも劇的に美味しくなります。
料理に使えば単に酢を入れたって感じの味とは違いとても深みが増した味に変化します。しかも、にんにく酢を使えば塩分を抑える事ができます。
⑦【にんにくのトウ立ち】
収穫も近くなって来るとニンニクの芽が成長してくる場合が有ります。成熟したすべてのにんにくから芽が出る訳では無いのですが伸びてきて芽が膨らみだしたらギリギリの所で摘み取ります。取らないとにんにくの芽(種子)に栄養を取られ土の中のにんにくは成長出来ません。肝心のニンニクが大きくならないという事です。
生にんにくが食べられるまで後、少しです。
⑧【にんにくの収穫】
6月末、ニンニクの収穫目安である、にんにくの葉が枯れ出し収穫の時期をむかえます。葉の枯れ具合を見て収穫になります。
【生にんにくの掘り起こし】
近年にんにくの収穫は機械化されつつ有ります。
しかし葉付の場合はそれが出来ませんので昔ながらのおばちゃん達による手掘りになります。非常に手間が掛り大変ですがニンニクに傷が付かない為、良質なにんにくを提供する事が出来ます。
⇒ ⇒ ⇒⇒⇒
にんにくの収穫(掘り起こし)で注意することは、雨の日またその翌朝など湿った気候の時に収穫する事は避けましょう。
このような感じでトラクタによる収穫が行われます。先にニンニクの茎葉をトラクタで刈払します。
<1> <2> <3>
茎葉を切り取ったニンニクに<1>収穫機のカッターを入れトラクタが進むと土が掘り起こされ<2>のゴムローラーで一気に<3>の様に、にんにくが収穫されていきます。
トラクタの後ろにカゴを設置して一杯になったら空かごと交換しながら収穫していきます。
⑨【田子にんにく収穫祭】
【完全な掘り立て生にんにくを販売】
待ちに待った収穫際【にんにく狩り】そして収穫後は、最大の楽しみである生にんにく料理!!
【生にんにくの姿揚げ】
すごく美味しいのでお試しになってください。
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【にんにく栽培のまとめ】
にんにくQ&A 解説とさらに詳しい説明 注意点等
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さらに詳しいにんにく栽培の方法 【要点】
【にんにくの圃場】
圃場の土を起こしフカフカの状態にならしその上に、マルチシートを敷きます。
【マルチシートの間隔 縦15cm】 【マルチシートの間隔 横25cm】
マルチシートのサイズ(縦横の間隔)は縦15㎝ 横25㎝を使用。中にはもっと間隔の狭いタイプも有りますが大玉を育てるならこのサイズをお勧めします。
【にんにく栽培における使用マルチのサイズ150×250 4列シート】
150×250のサイズのマルチシートで穴の列が4列の物を使用しますが家庭菜園の場合や畑の広さ等を考慮し2列の物などを使用してももちろん問題ありません。
【にんにく栽培 作業手順】
にんにくの種を植える時はバケツ等ににんにくを入れて持ち歩きながら植えるのでは無く、マルチの上にばらっとまいた上でおこないます。この方が疲れず作業効率も良いからです。
【にんにくの種をこぼす にんにく球を1片づつに分ける作業】
にんにくの球を1片つづにばらした物を種として使います。次は植え付け方を説明します。
【にんにくの持ち方】
実はにんにくを植える時には、にんにくの持ち方が有ります。
まず根の部分を上にして親指でバラしたにんにくの背中(白い皮の付いている面)を持ち、人差し指、中指で側面の黄色みがかった部分を押さえて持ちます。常にこの形で植える事によりにんにくが成長してきた時、にんにくが同じ方向で成長し伸びてきますので互いにぶつかったりせず収穫の際も効率よく作業できます。
【にんにくの植え付け方】
にんにくを植え付ける場合は結構な力でマルチの穴に先ほど説明した持ち方で写真の様に押し込みます。こぶし部分が少しめり込む位です。
\
【マルチの中に種を入れた状態】
にんにくの芽が出る先の部分を上にして植付けます。先ほどはコブシ程まで押し込むと説明しましたが実際には何㎝なのが測ってみます。
【にんにくの種 植付け深さ約5cm】
植え付けたにんにくの種の上部から地表までは約5㎝です。
【土を盛った後の最終的な植付け深さ約70mm~100mm】
雑草がマルチの中で増えない為にもマルチの穴を盛り土して隠し最終的なにんにくの種、上部から地表までの長さは約7㎝~10㎝程度になります。
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にんにく栽培Q&A
【にんにくの植え付け時期】
9月下旬から10月中旬ごろです。
【にんにくの芽が出てきた】
マルチシートと使っている場合シートの中で芽を出せないにんにくの芽がありますので手で出してあげます。
【雪が解けて春になったがニンニクの葉が枯れてきている気がする】
3月から4月の初め頃までは枯れたようになっていますので病気になったと勘違いされる方もいると思いますがもう少し待ってみてください。きっと日に日に緑色に戻ってくると思います。
【一つの種から2本3本と芽が出ている】
生育の悪い方を良く見極めて1本だけにします。そうしないと土の中のにんにくが肥大化しません。
【にんにくの茎から新たなる茎が出てきたが、そのままで良いのか】
収穫も近くなってくると現れます。にんにくのトウと云います。いわゆる、にんにくの芽です。見つけたら摘み取ります。取らないとトウに栄養を持って行かれ、にんにくが大きく育ちません。
【にんにくの収穫時期】
にんにくの収穫時期は例年6月下旬から7月上旬の2週間程度です。乾燥前の生にんにくは、この2週間しか有りません。
【福地ホワイト六片種を植えたが収穫したら数が違う】
「福地ホワイトの種で栽培し収穫したら6片無いものがあるがこれは本当に福地ホワイトなのか」名前に6片とあるので6片あると思っている方が多いと思いますが、これは品種の名前になります。実際は平均4から8片前後になります。
【収穫したニンニクの保存方法】
収穫したにんにくは風邪通しのよい日陰に1カ月ほど吊るして乾燥させます。収穫したらすぐに乾燥させないとニンニクにカビが生えたりして持ちません。生にんにくが一般に出回らないのは、こういう理由からです。
平成24年6月23日(土)-24日(日)2日間にわたり田子にんにく狩りが行われ、全国から、にんにくの本場、田子産にんにくを求め大勢の方に参加頂きました。 広いにんにく畑から、お好きなにんにく10本、1,500円でのご提供です。皆さん、より大きいにんにくを探しながらの収穫はさながら宝さがしです。 赤ちゃんも参加して収穫際の記念撮影 立派な福地ホワイト6片の田子にんにくが収穫できました。収穫後は青空の下、お楽しみのにんにく料理です。 丸々太った真白なにんにく。燥前の生にんにくは1年のうち一度だけ味わうことができます。 にんにくを素揚げにしてお好みの味付けで頂きます。 こちらは素揚げしたニンニクに八戸産のイカが入った 食べるオリーブオイルで味付け、美味しいです。 この他にも、にんにくの刺身や青魚の薬味などで食べると最高です。 |